不運無双の男

序:ついていないという才能について

彼の名は山科潤(やましな・じゅん)。
生まれは岐阜、育ちは信州、そして卒業したのは、北陸某県にある地味で堅実な国立大学。専攻は心理学。が、それを活かす機会は今のところ一度もない。何故なら、彼は“ついていない”という、ある種の才能を持ってこの世に降り立ったからだ。

病弱でもなければ、極端に不器用というわけでもない。口下手だが致命的ではなく、顔も可もなく不可もなく。だが、なぜか何かが毎日少しずつ彼を外す。狙ってもできないような絶妙なすれ違いを、日々繰り返す。

まるで神様のいたずらのスクリプトに沿って、彼の人生はゆっくりと、だが着実に“ずれ続けて”いる。

第1章 ついていないエピソード・十撰

一、傘の呪い
天気予報を信じて傘を持てば晴れ、信じなければ豪雨。5日連続で「逆」を行かれる。

二、牛乳キャップ爆弾
いつも牛乳を開けるとピッと噴き出す。牛乳界のサバトに呪われているとしか思えない。

三、最前列の地獄
映画館で、隣に座るのは必ずポップコーンを咀嚼音立てて食べる中年男性か、鼻をすする女子高生。

四、タイミングの魔
コンビニで会計を済ませた瞬間、レジのお姉さんが「レジ袋いりますか?」を聞きそびれ、後続の客の邪魔をしてしまう。

五、瞬間的絶望
エレベーターが開いた瞬間、満員+後ろの人に押し出される。行きたい階にはたどり着かない。

六、抽選という名の絶望
何気なく応募したビールの懸賞、応募券35枚送っても当たらず、同僚は1枚で当選。

七、満員電車の運命
なぜか吊り革が汗で濡れている位置にしか立てない。しかも、目の前の人は必ず寝落ちする。

八、消えるWi-Fi
Zoom会議の冒頭、「自己紹介お願いします」の直後に限ってWi-Fiが途切れる。しかも復活は話が終わった頃。

九、変な声が出る呪い
誰もいない公園で足をくじいた瞬間、「アベシッ!」という変な声が出る。通りすがりの小学生に笑われた。

十、缶コーヒーの反逆
自販機で「微糖」を押したつもりが「ブラック」。飲んでむせて、白シャツに飛び散る。午前9時、出社前。


続けて、彼の不運と反比例するように“ラッキーに好かれた女”が登場するのだが、
その話は、また次の節に譲るとしよう。

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